FAQ(よくある質問)

A1.意匠とは、物品あるいは物品の部分における形状・模様・色彩にかんするデザインをいいます。工業製品として生産された物品のデザインとして重要な価値をもちます。デザインすべてが意匠とはなりません。
産業が高度かつ複雑になるにつれて、創意工夫が生産物に対してより大きな価値を与えるようになってきました。工業技術の発達により、同じ性能の工業製品を短期間で数多く生産できるようになると、他者の生産したものとの差は製品そのものの性能や質よりも、別の側面によって決まるようになったのです。
例えば、性能が同じA社製のバイクとB社製のバイクが販売されたとすると、消費者は、どちらのバイクを選択するでしょうか?
性能が同じなら、色や形などのデザインで選ぶ場合が多いと思われます。そのため、デザインに関しては、専門家がデザインします。
このようにデザインは、人間の知能によって創作された知的財産なのです。財産には、他者からの侵害の危険性が常につきまといます。ライバル社がまねた製品を販売すれば、売り上げは減少するかもしれません。これでは、常に新しい創作をしようとする意欲はそばれ、産業の発展にとって障害となります。
そこで、製品に関するデザインを権利として、法的に保護するようになりました。それが意匠制度であり、その根拠となる法律を意匠法といいます。

A2. 意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を推奨し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。
すなわち、意匠法は①「手段」として、意匠の保護及び利用を図ることにより、②「直接の目的」として、意匠の創作を推奨し、③「終極的」に産業の発達に寄与すること、を目的としている。

A3. 意匠権を取得するためには、登録出願が必要なことは前述しました。しかし、出願すれば直ちに登録されて意匠権を取得できるわけではありません。権利として保護するに値する要件が整っていなければならないのです。
①工業上利用可能性がある
意匠が物品のデザインとして財産的価値を認められているのは、それば物品と結合して工業的に大量生産されることにより、多大な利益を生み出すからです。
従って、意匠が権利として認められるには、工業的な生産方法により、同一物を量産出来ることが必要になります。
②新規性があること
意匠は、人間がその創作活動によって新たに生み出したものであるからこそ、法的に保護の対象とされます。つまり、すでに世の中に存在しているものは、保護の対象とはなりません。これを、新規性の要件といいます。
次の場合には、新規性が認められず、意匠登録の要件を原則として満たしません。
a国内や海外で公然と知られた意匠と同一のもの
b国内や海外で頒布された刊行物に記載されたり、インターネットで公表された意匠と同一のもの
c a、bと類似するもの
この例外として、意匠登録を受ける権利をもつ者が、自分で先に製造販売したために、意匠が世の中に知られてしまっても、最初の販売から6ヶ月以内に出願すれば、新規性を失わないとされています。
③創作性があること
意匠は、人間が頭脳・感性を使って創作したところに、知的財産性が認められます。誰もが簡単に思いつくものであれば、知的財産としての価値はなく、法的な保護に値しません。従って、登録にあたっては、「創作性(創作非容易性)」がなければなりません。
④先願であること
意匠登録出願では、「先願主義」を採用しています。
先願主義とは、同一あるいは類似の意匠について複数の登録出願があった場合、先に出願した方を権利者として取り扱うという考え方です。
従って、出願した時点で既に同一または類似の意匠について誰かが先に出願した場合は、登録が認められません。
⑤物品の機能を確保するために不可欠な形状だけからなる意匠ではないこと
物品の機能を確保するために不可欠な形状であれば、それはデザインではなく、技術の領域に属します。その場合、意匠登録の対象とはなりません。
⑥その他の不登録事由に該当しないこと
その他、公の秩序または善良の風俗(公序良俗)に反しないことなどが必要となります。

A4.意匠権は、メーカーなどに譲渡することでその対価を受け取り、利益を得ることができます。
ただ、意匠権の移転は特許庁長官に届け出をして登録を受けなければ、効力を生じません。これは、意匠権が排他的・独占的な権利であり、社会的にも多くの利害関係が生じるからです。

A5.仮に、意匠(デザイン)が知的財産として認められず、誰にでもマネが出来るものだとすると、創作者の意欲は削がれ、競争や切磋琢磨することがなくなり、産業の発達は望めません。その結果、消費者である国民一般の生活向上にも役立ちません。
その為、意匠法では、工業製品に関するデザインを意匠として登録することによって権利性を認め、法的に保護しているのです。つまり、意匠登録制度は、意匠の保護および利用を図ることにより、意匠の創作を推奨し、産業の発達に貢献することを目的としているわけです。

A6.意匠権を取得すると、登録された意匠と同じ意匠だけでなく、これに類似する意匠をも排他的に利用することができます。従って、他人が意匠権者の許諾なく登録された意匠を利用すると、それを排除し、損害を回復するという効力をもっています。
つまり、他人が意匠を使用することを差し止めるよう求めたり、損害が生じた場合には、損害賠償も請求できます。

◆「部分意匠」に関して

【部分意匠の願書について】
Q1.部分意匠の願書は、全体意匠の願書とどこが違うのですか?

【部分意匠の図面について】
Q2.部分意匠は、図面にどのように記載するのですか?

Q3.一点鎖線は、どのような場合に使用するのですか?

Q4.例えば、【背面図】に実線部分が表れないときは、【背面図】を省略することができますか?

Q5.部分意匠も【断面図】を提出する必要がありますか?

Q6.部分意匠の大きさに制限はありますか?

Q7.図を描く領域が狭く、実線部分がとても小さくなってしまいます。どのように記載したらいいですか?

Q8.破線部は、どの程度詳細に描く必要がありますか?

Q9.模様のみを、部分意匠として意匠登録を受けることができますか?

Q10.「孔」の形状について、部分意匠として意匠登録を受けることができますか?

【部分意匠の検索について】
Q11.部分意匠の意匠分類は、どのように付与されているのですか。また、部分意匠のみを検索することはできますか?

Q12.図形の内側に破線部が記載されている時、審査ではどのように取り扱われますか?

Q13.実線部分の「位置、大きさ、範囲」が少しでも異なると非類似となるのですか?

Q14.「その他の部分」は、類否判断の際にどのように取り扱われますか?

Q15.全体意匠と部分意匠は、本意匠と関連意匠として意匠登録を受けることができますか?

Q16.部分意匠から全体意匠へ変更する補正

 

【部分意匠の願書について】
Q1. 部分意匠の願書は、全体意匠の願書とどこが違うのですか?
A1.以下の2点を除いて、基本的には同じです。
1.【意匠に係る物品】の欄の上に、【部分意匠】の欄を設けます。ただし、その欄には、何も記載しません。
2.【意匠の説明】の欄に、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分が、図面においてどのような方法によって特定されているかについて記載します。
例えば、「意匠登録を受けようとする部分」を実線で描き、「その他の部分」を破線で描くことにより「意匠登録を受けようとする部分」を特定した場合は、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分がある。」と記載します。

【部分意匠の図面について】
Q2.部分意匠は、図面にどのように記載するのですか?
A2. 図面作成の基本は全体意匠と同様に、立体を表す場合には、原則「正投影図法」により、【意匠に係る物品】全体の形状の【正面図】【背面図】【平面図】【底面図】【左側面図】【右側面図】を作成し、一般には、「意匠登録を受けようとする部分」を実線とし、「その他の部分」を破線で描きます。

Q3.一点鎖線は、どのような場合に使用するのですか?
A3.〔図1〕のような立体において、上半部分について部分意匠として意匠登録を受けようとする場合、〔図2〕のような記載では、境界線が不明確で当該部分を特定することができません。
 このようにのように「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」との境界にしたい箇所に実線が存在しない場合には、「境界を示す線」として実線又は一点鎖線を用いて境界を明確にしてください。そして、【意匠の説明】の欄に、境界線は単に境界のみを示すために引いた線である旨記載してください。
なお、単に境界を示すための線を実線にした場合に、【意匠の説明】の欄の記載において当該境界線を特定しづらいこともありますので、そのときは、境界線を一点鎖線とし、願書の【意匠の説明】の欄には、例えば、「一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」と記載してください。

【一点鎖線を使用した部分意匠の作図例】

Q4.例えば、【背面図】に実線部分が表れないときは、【背面図】を省略することができますか?
A4. 部分意匠の出願図面についても、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」の記載方法が規定されている以外、提出が必要となる図面については、一般の規定が適用されます。
したがって、部分意匠の出願においても、図の省略が認められるのは、意匠法施行規則様式第6備考8又は10に規定される同一又は対称である場合の一方の図の省略等に限られており、基本的に「その他の部分」を表す破線のみの図であることを理由として図を省略することはできません。
創作のベースとなった物品における、当該部分の創作の価値を評価する部分意匠においては、出願図面によって、「意匠登録を受けようとする部分」が、創作のベースとなった物品全体の中でどのような位置、大きさを、範囲を占める部分であるかを明らかにすることが必要です。
そのために、創作のベースとなった物品の全体を開示することによって、その中でどのような態様となる部分について意匠登録を受けようとする出願であるかを明示することが必要であり、全体の開示がない場合は、意匠が具体的でないものとなります。

Q5.部分意匠も【断面図】を提出する必要がありますか?
A5. 部分意匠においても、「意匠登録を受けようとする部分」(実線部分)の表面の凹凸形状が、【正面図】等の一組の図面で表現できないときは、全体意匠と同様に、当該部分の【断面図】を作成しなければなりません。
なお、部分意匠の【断面図】の切断面には、例えば、一組の図面において実線で表された「意匠登録を受けようとする部分」及び破線で表された「その他の部分」について、意匠法施行規則様式第6備考5及び15に基づき、約0.2㎜の太さの平行斜線を引きます。このとき、平行斜線は、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」とで、例えば、実線と破線により描き分ける必要はありません。
一方、外形線については、全体意匠の【断面図】の場合と同様に全て実線で記載することもできますが、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」とを、例えば、約0.4㎜の太さの実線と破線により描き分けることをお勧めします。

(注) 「その他の部分」の切断面に引かれた平行斜線が実線ではなく破線によって表されているもの、あるいは平行斜線を表していないもの等であっても、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断した場合に、断面を表す表現方法の錯誤であると認められ、断面形状を当然に導き出すことができるものである限り、切断面の表現方法が不十分であることをもって意匠が不明確であるとはしません。

【断面図の記載例】

また、原則、図面における「意匠登録を受けようとする部分」の特定については、一組の図面において「意匠登録を受けようとする部分」が特定されており、かつ、「意匠登録を受けようとする部分」を特定する方法が願書の【意匠の説明】の欄に記載されていなければなりませんが、部分意匠の意匠登録出願において「意匠登録を受けようとする部分」を特定する場合に、一組の図面の他に【断面図】を加えないと作図上当該部分を特定できない場合には、一組の図面に【断面図】を加えて当該部分を特定することができるものとしています。
その場合には、意匠登録出願の際に願書の【意匠の説明】の欄に、例えば、「断面図を含めて部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定している。」旨記載することを奨励しています。

Q6.部分意匠の大きさに制限はありますか?
A6.創作のベースとなった物品全体に対する、「意匠登録を受けようとする部分」の大きさは、部分意匠として認められるか否かの判断において、直接の要件とはなりません。
部品として権利取得ができない分離不能な部位の創作についても、意匠登録を受けることができるようにするのが部分意匠導入の意義であり、当該物品の部分に創作が認められ、その形態が明らかであれば、部分意匠の創作のベースとなる物品との関係で、占める割合が小さいことだけをもって、部分意匠として成立しないということはできません。
ただし、「意匠登録を受けようとする部分」の全体の形態が微細であるために、肉眼によってはその形態を認識することができないものについては、意匠登録を受けることができません。

Q7.図を描く領域が狭く、実線部分がとても小さくなってしまいます。どのように記載したらいいですか?
A7.「意匠登録を受けようとする部分」の形状について、物品全体の図のみでは十分に表せない場合には、全体意匠の出願の場合と同様に、【部分拡大図】を加えることによって詳細を示します。

Q8.破線部は、どの程度詳細に描く必要がありますか?
A8.原則、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」を含む、部分意匠の意匠に係る物品全体の形態に、願書の「意匠に係る物品」の欄に記載された物品の区分に属する物品を認識するのに必要な最低限の構成要素が少なくとも明確に表されていなければなりません。

Q9.模様のみを、部分意匠として意匠登録を受けることができますか?
A9.部分意匠といえども、物品の形態でなければなりませんので、例えば、繊維製品のあらゆる物品(ティーシャツ、靴下、ネクタイ、ハンカチ等)に表すことを目的とした花びら模様を創作したときに、図面に実線で花びら模様のみを描き、【意匠に係る物品】の欄に「繊維製品に表す模様」として部分意匠の意匠登録出願をしても、意匠登録を受けることができません 。

意匠登録を受けれない事例

この場合には、下記のように意匠登録を受けたい物品ごとに、部分意匠として意匠登録出願をしなければなりません。

Q10.「孔」の形状について、部分意匠として意匠登録を受けることができますか?
A10. 「孔」あるは「切り欠き部」自体は、空間であって物品の外観とはいえませんが、「孔」あるいは「切り欠き部」を囲む壁面を「意匠登録を受けようとする部分」とし、結果として、「孔」あるいは「切り欠き部」について、部分意匠として意匠登録を受けることが可能です。

【「孔」の形状に関する部分意匠の図面作成例】

【部分意匠の検索について】
Q11.部分意匠の意匠分類は、どのように付与されているのですか。また、部分意匠のみを検索することはできますか?
A11. 部分意匠については、【意匠に係る物品】の欄に記載された物品の区分及び「その他の部分」をも含んだ物品全体の形状、模様等にしたがって、全体意匠と同様に意匠分類が付与されています。
なお、特許庁ホームページに掲載されている「特許電子情報図書館」においては、「意匠公報テキスト検索」又は「日本意匠分類・Dターム検索」により、部分意匠のみを検索することができます(ただし、「意匠公報テキスト検索」は、2000年以降に発行された意匠公報掲載の部分意匠のみが対象)。
例えば、「意匠公報テキスト検索」では、願書の【意匠の説明】の欄に必ず部分意匠の特定方法に関する記載があることを利用して、検索画面の「意匠の説明」の欄に「部分意匠」と入力してテキスト検索することにより、ある特定の意匠分類が付与された部分意匠のみを検索することができます。

Q12. 図形の内側に破線部が記載されている時、審査ではどのように取り扱われますか?
A12. 例えば、下記の図の壁板のように図形の内側に破線部が記載されている場合には、一般に、図形中の破線等によって表された位置に、形状等を特定しない部分(下記の事例では、部分意匠として意匠登録を受けようとしない、形状を特定しない窓)を有する意匠として取り扱われます。
そして、「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」との境界は、破線部の外縁にあるものとして取り扱われます。
したがって、下記の事例では、「意匠登録を受けようとする部分」は、[図1]のように平板長方形状壁板において正面部中央左寄りに破線で表された長方形状(薄墨を施した部分)を除いた部分となります。

Q13. 実線部分の「位置、大きさ、範囲」が少しでも異なると非類似となるのですか?
A13. 位置、大きさ、範囲は、当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであればほとんど影響を与えない、と考えられています。

Q14. 「その他の部分」は、類否判断の際にどのように取り扱われますか?
A14.  まず、審査官は、例えば、実線で描かれた「意匠登録を受けようとする部分」と破線で描かれた「その他の部分」とを、当該【意匠に係る物品】を認識するための基礎としています。
次に、破線で描かれた「その他の部分」に基づいて、「意匠登録を受けようとする部分」の「位置、大きさ、範囲」を認定しています。
ただし、「その他の部分」の形態のみについては対比の対象としませんので、ほとんどの場合、「その他の部分」の形態の相違が類否判断に直接影響を与えることはありません。

Q15. 全体意匠と部分意匠は、本意匠と関連意匠として意匠登録を受けることができますか?
A15. 全体意匠と部分意匠は、本意匠と関連意匠として意匠登録を受けることができません。

Q16. 部分意匠から全体意匠へ変更する補正
A16. 例えば、部分意匠の意匠登録出願と認められる場合に、願書の【部分意匠】の欄を削除して、全体意匠の意匠登録出願とする補正、逆に、全体意匠の意匠登録出願と認められる場合に、願書に【部分意匠】の欄を追加して部分意匠の意匠登録出願とする補正は、出願当初の意匠の要旨を変更したものとして却下となります。

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